Vol.02

〜幅員4m未満の道路の扱いについて(都市計画区域内)〜

 本来なら法律専門用語を使って話を進めるべきだと思うが、言葉が難しくてその説明の方が大変なので、中身を掻い摘んで話してみたいと思います。建築基準法第42条第2項に次のような内容がある。

街中の道路で道路幅員が4m未満の道路に接する敷地(街中では住宅など建物を建築する場合は敷地が道路に2m以上接していなくてはならない)は、道路中心線から2m後退した位置を道路との境界線としなくてはならない。

 どういう意味かといえば、例えば自分の家の敷地が幅員3mの道路に接していたとすると、道路中心から2m後退した位置を道路との境界にすることになるから、自分の敷地を50p程道路に提供する形になる。これはある意味とても良いことだと考えている。つまり、街中の狭い道路は家が建て変わるごとに、少しずつ広くなってゆき、いつかは4m未満の道路は無くなる。

しかし、この法が定められて50年余りが過ぎた現状でも、車がすれ違えない、消防車や救急車の入れない道路が沢山あるし、その道路の両側には新築された家も多くある。なぜ、このような事になるのか?

幅員3mの道路に接する敷地に建物を建築する場合、確認申請なるものを建築主事に提出し審査を受ける。当然その時の設計図書の敷地は50p後退し、道路が50p広くなった様に図面に記載され、工事が進んでゆく。建物が完成し行政の検査を受ける時もこの状態は保たれているが、検査を受けた途端、門や塀が造られて、又元の3m道路の幅員に戻ってしまう。

ある時私の同級生(広島工業大学)が建築主事をしていた時の話である。雑談をしている中、彼がこう言った。「建設省に行った時のことだが、官僚が建築基準法第42条第2項が定められて数十年が経っているから、この世の中で4m未満の道路はもう無くなっているだろう」と言ったというのだ。
呆れて物が言えなかったし、世の中の事を全く理解していない。これじゃあどうしようもない・・・と思ったことを話してくれた。

又、15年程前になるだろうか、東京に行った時、将来の事務次官候補と言われている私の先輩(山口県・柳井高校)と話す機会があり、当時の建築確認申請や基準法の運用(適用)実態を話したら、実際に法がどのような形で適用されているのか知らなかった様子で、とても興味深く聞いてくれ、又話を聞かせて欲しいとの事であったが、そのままになってしまっている。

 この法自体は悪くないのだが、運用と処理が余りにも悪い為、結局のところ法の主旨が生かされていないのである。

以下この理由。


1.
道路に提供する敷地の部分(所有権は本人のままで登記の変更はなされない)は、自分の敷地面積に参入されないので、敷地面積は少なくなり、容積率、建ぺい率が不利になる(建物規模が小さくなる)。
「自分の土地でありながら、自分の土地だと建築基準法は認めない」

2.
道路に提供する敷地の部分は、固定資産税の減免もない。

3.
土地を売却する時はこの法律がある為、評価は少しだが下がる。
踏んだり蹴ったりではないか。弱い立場の国民に対して大義名分は良いとして、都合の悪いところばかりを押し付けては、国民はこの法を守ってはくれない。

しかし、解決方法はある。

建物を建築する場合、確認申請を提出した時点で、行政は道路に算入される敷地を買い上げる事にすれば、本当に2、30年経てばこの世から4m未満の道路は無くなる。“縦割行政だから仕方がない”“そのような予算は無いからできない”とばかり言い訳をしていても、この世は良くならぬ。仕組が悪ければ仕組を作り替えれば済む事だ。こんな小学生でも分かる事が、大人になってなぜ出来ない?国税局のせいで日本中が力のない小物ばかりにされてしまった。腹が立ち、力の無い我が身が恨めしい。

平成20年5月27日補足

 今日のこと、当社の才媛 鵜飼 慎子 が建築基準法関連の法律をインターネットで調べていたとき、偶然にも、この“幅員4m未満の道路の扱いについて”の解決方法を実行している自治体を見つけたのです

その自治体とは、愛知県の刈谷市・東浦町、長野県の長野市、茨城県の土浦市、神奈川県の厚木市などである。それぞれの自治体の条例を調べてみると、“幅員4m未満の道路全てが対象ではなかったり”と少しずつ条件は異なるものの、“買い上げに必要な測量や登記費用全てを自治体が負担する”など、これぞ、“行政の在り方だ!”というものを見た気がしたので、さんざん悪口を言いましたが、反省します。

何かにつけて“前例が無い、予算がない”と言う行政だが、これらの自治体は他の自治体に比べて、財政的に特別裕福だというわけでは無いはずだし、建築基準法が制定された年にこれを始めたわけではない。要は“地域住民が縦割り行政の狭間で苦しんでいる”“法は法として、余りにも不合理で住民に不利益を与えている”ことの解消を、気が付いた時に始めたということであり、その気になれば出来ることの証明だ。

いつまで経っても官僚が法改正をやらないのなら、末端行政の我々が条例を作ってでも解決する!この意気込み、真の行政とは、かくあるべきで、ある意味これが当たり前の事だと思うのだが、これらの自治体を賞賛しなければならない気持ちになるのは、いかに日本の省庁を始めとする行政全般が地に落ちているかということになる。

これら自治体の議員や行政に携わる方々の中にきっと建築の法律に詳しい“人物”がいるに違いない、とても嬉しくなった。他分野にも沢山ある国民虐めの不可思議な法律も、このよう新しい条例を作り、少しずつででよいから“住民の難儀”を解決して欲しいと思う。

皆さんの自治体でも“これは可能である”ということです。インターネットで調べてみてください。キーワードは「道路後退用地制度」又は「道路後退用地事業」です。

このようなことが次々と日本各地で起きてくるようになれば、官僚もつまらない法律は作れなくなるし、天下り先確保の特殊法人も造り難らくなる。日本はきっと良い方向に向かう。