Vol.01
※毎回、難しい内容ばかりで面白くないだろうと私自身が思っているし、皆様も同じように感じておられることと思います。本当に伝えたい内容は、建築基準法などではないのですが、建築をやっている手前、全くこれに触れない訳にもゆかないと思い書き始めたのですが、書いてみると止められなくなってしまい、私なりに考えて「くたばれ建築基準法!」シリーズの後には、別な内容を入れ込むようにしています。
昨日、これを読まれた40代の本好きの女性から感想を頂いた。基準法は難しくてよく分からなかったけど、テンポが良くて面白いのでいっきに読んでしまった。でも、できたら「今の世の中にもこんなにいいところがあるぞ、なんてのも書いて欲しい」と要望されたが、中々それに思い当たらなくて今困っている。
数日前、私の高校の先輩で作家の侑木京介氏より「今頃のヤワな連中が読んだら右翼的な奴と思うよ・・・中略 美しい心の国日本も、愛のムチが出来る親や教育者が出ない限り、夢で終わりそう。ああ、なんたる日本・・・」と励ましの感想を頂戴したので「私は右翼ではありません。ただ今の日本を憂いているだけです」と返信申し上げたら、「右翼は嫌いだが右翼的な思考が不足しているんだよ。・・・中略 先日話をしてみたら柳井高校第一回卒業生も俺達と同様、日本を憂いているぜ!」と返信がきました。
今日はちょっと一息入れて、面白い話を聞いて頂きたいと思います。
以前私が大学生を集めて、論語・諺・四文字熟語・論文作成を月1回と、週2回建築基準法と漢字の書き取りを教えていた事を話したと思います。今日はそれにまつわる話をしてみます。学生を集めて色々な話をして聞かせている中、諺や熟語を使用して話すのだが、必ずその意味を聞いてくるので「この諺、今まで聞いたことないのか?」と尋ねてみると「ありません」なのだ。兎に角、今の若い人達の社会常識は驚くほどに欠しく、今回の内容で私が恐ろしくなったと感じた事の一端を共有して下さい。
私が社会生活をする上で最低これ位は知っていて欲しいと思って抜き出した四文字熟語と諺は二百七十程でしたが、毎月問題形式で次の様に10問ずつ出していた。
二階から○○、無芸○食、毒食わば○まで、一石○鳥、○腸の思い、枯木も○の賑い、鳩に○鉄砲、○を見て森を見ず、○○な考え休むに似たり、覆水○に返らず・・・この程度の内容で10数名いる学生のうち、平均正答率は僅か一〜二問しか出来ない学生が六割、半分近く解答できる者が三割、残り一割がよくて六問の解答率である。
全員不正解だった問題を挙げてみると、○唱○随、岡目○目、○花繚乱、○の面に小便、悪○身につかず、○の恥は掻き捨て、寝耳に○、○は人の為にならず、良○賢母、一騎当○、割れ○に綴じ蓋、厚顔無○、○○は流々仕上をご覧じろ、○屋の白袴、○鏡止水など教えれば切りがないほどであったが、毎回の平均正解率は10問中4問がやっとであった。
その問題の珍解答例をいくつか紹介してみます。「二階から一階」と答えた者がいたので、じゃあ三階から○○としたらどうなると聞くと、二階と答えたので、四階もあるのでは?と言い返すと返事が出来ず、それは一体何を意味する諺なのか?と尋ねたら黙ってしまった。そして無芸和食、毒食わば餅まで、一石白鳥、盲腸の思い、枯木も花の賑い、鳩に水鉄砲、海を見て森を見ず、一休の考え休むに似たり、覆水家に返らず、とは思わず笑ってしまったが、笑い事では済まされない。二十才を過ぎた大学生の男女である。
最後の「覆水盆に返らず」であるが、これには面白い話がある。以前お話した大手電機系列会社の女性管理職から聞いた話である。親会社の杉下電工の入社試験の問題で、「覆水盆に返らず」の意味を述べる問題を出したところ、その内の一人の解答が「昔、中国で覆水と言う人物がいたが、仕事が忙しくて、盆に田舎へ帰ることが出来なかったと言う故事に習って、とても忙しい様を言う」であったそうだ。
採用担当者は皆大笑いしたそうであるが、そのうちの一人が「しかし、こんな面白い発想をする奴が一人くらいいても良いのではないか、営業に使ってみれば案外いけるかも・・・」と言ったので、それもそうだなぁ〜、と採用してみることとなり、三ヶ月の研修の後に正社員として雇用し、営業で使ってみたそうであるが、結局使いものにならなくて二、三年後、退職していったそうだ。文の下りから考えてみても中学生か小学生の高学年なら思いつきそうな解答である。それを面白がって採用した方に問題ありだと思うが、大企業のサラリーマンは面白がって無責任にこんな事が出来る余裕があるのは羨ましい。小企業や零細企業の創業者ならきっと採用しなかったろう。
10年近く前になるが、別な話で、ある著名な経済学者(高齢だがいくつもの大学の教授を兼任していた)のお宅を訪問した時の話である。ある時、学生結婚する者がいて、その世話をする学生の一人が結婚式の出席を依頼してきたので「こんな年寄りが出席しても喜ばれないだろう・・・」と断ったら、「先生、枯木も山の賑いと言うじゃあないですか」だったそうだ。呆れて二の句が継げなかったと話しておられた。
そう言えば、「二階から一階」と答えた学生が大学を卒業して就職し三年目が来るが、その就職先は叶刮コ電工系列のポナホームだった。
・・・あいつ今大丈夫だろうか?